フィジカルAI/ロボット業界に特化した人材育成・マッチングプラットフォーム「RobotMateHub」の代表・山本力弥が、ティム・ロメロ氏によるインタビューを受けました。テーマは「フィジカルAIの未来」。日本のロボット産業の現在地と、そのなかでフィジカルAIが果たす役割について語り合った対談が、「Humanoids Summit」のYouTubeチャンネルで公開されています。本記事では、動画本編とあわせて対談の内容をダイジェストでお届けします。
インタビュー動画
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対談の主なポイント
- RobotMateHubのミッション:研究者向けの教育にとどまらず、実装や人とロボットのインタラクションまで含め、ロボット産業に関心を持つ人々のギャップを埋めるというプラットフォームの狙い
- 業界の壁を越える連携:企業・スタートアップ・学術機関の連携がこれまで日本で難しかった背景と、セクター間の人材流動性がイノベーションに欠かせない理由
- 日本の強み:ロボットを「存在」として受け入れる文化的土壌、コアハードウェア部品における技術力、高齢化社会がもたらすロボット産業への経済的ニーズ
- 人とロボットが共存する未来:自然なコミュニケーションに対する日本の消費者の高い期待と、ヒューマノイドロボットが日常生活に溶け込んでいく可能性
インタビューダイジェスト
RobotMateHubのミッション——業界への「入口」をつくる
対談の冒頭、山本はRobotMateHubを「フィジカルAI・ロボティクス産業を理解できる人を育てるためのプラットフォーム」と説明しました。研究者向けの高度な教育にはすでに優れたプラットフォームが存在するため、あえてそこは狙わず、これから業界に入っていく人のための「入口」をつくることに焦点を当てています。対象は「フィジカルAI・ロボットが好きな人、興味がある人すべて」。ハードウェア・ソフトウェアといった技術領域だけでなく、実装、ユーザー体験、人とロボットのインタラクション(HRI)、そして人とロボットが共存するパートナーとしてどう暮らしていくかまで、幅広い記事コンテンツを提供しています。
実際のユーザーの半数は大学生です。工学専攻の学生だけでなく、マーケティングやブランディングを学びながら業界入りを目指す非エンジニア層も参加しており、企業側も大手企業とスタートアップの双方がコミュニティに加わっています。
なぜ日本では連携が難しいのか
対談では、企業・スタートアップ・学術機関の連携が日本で進みにくい理由も話題になりました。山本が指摘したのは、企業やコミュニティが情報を内側に閉じてしまう構造です。かつて在籍したソフトバンクロボティクスを「素晴らしい会社」と振り返りつつも、外からはどんな人がいて何に取り組んでいるのかがほとんど見えなかった、と自身の経験を率直に語りました。
大学のなかでさえ、工学部の学生がビジネスやアートを学ぶ学生と接点を持ちにくい「サイロ構造」がある——というロメロ氏の指摘にも山本は同意。国内外・専攻・立場の壁を越えて交流できるコミュニティこそが、参加者一人ひとりのキャリアだけでなく、ロボット産業の未来にとっても重要であり、それがRobotMateHubを立ち上げた理由のひとつだと述べています。
人材が「循環」する仕組みへ
ビジネスモデルとしては、フィジカルAI・ロボティクスの検定「R検定」を軸に、合格者を企業へ紹介し、その人がキャリアの転機を迎えたときには、再びプラットフォームに戻って知見や経験を次の世代へ共有してもらう——そんな人材循環の構想が語られました。
背景には、事業フェーズ(0→1、1→10、10→50)ごとに求められる人材が変わるという実感があります。立ち上げ期にはハードウェア・ソフトウェアの設計者が、その後は品質保証が、さらに事業が拡大すると運用チームが重要になっていく。役割を終えた人材が、次に立ち上がる会社へ移って再び活躍する——そうした流動性が業界全体を強くする、というのが山本の見立てです。
変化の起点はスタートアップから始まり、次にアカデミアへ広がっていくとの見方も示されました。実際に2026年3月末に開催したヒューマノイドロボット「Unitree G1」を使ったハッカソンには約25人が参加し、その半数が大学生、半数が社会人。立場を越えて協働するこうした場を、今後日本各地へ広げていきたいと意気込みを語っています。
日本が持つ3つの強み
「ヒューマノイドロボティクスとフィジカルAIにおいて、日本が世界に示せる独自の強みは何か」というロメロ氏の問いに対し、山本は3つのポイントを挙げました。
鉄腕アトムをはじめとするアニメの歴史に育まれ、ロボットを単なる機械ではなく、人と共に働く「存在」として受け入れる感性が社会に根づいている。
軽量化やバッテリー性能など、ヒューマノイドロボットの長時間稼働を支える基幹部品の領域で、日本企業が今も強みを持ち続けている。
介護をはじめ、人とロボットが共に働く必要性に世界で最初に直面する国であり、企業がロボット活用に挑戦する経済的な動機が他国よりも強い。
さらに、「おもてなし」に代表される日本の接客・コミュニケーション水準の高さにも言及。この感覚やそこから生まれるデータは、日本ならではの資産になり得ると語りました。
人とロボットが共存する未来へ
日本の消費者は、ロボットとの最初のコミュニケーションにはとても寛容です。しかし山本は自身の経験を踏まえ、使い始めて間もなく「もっと自然な会話をしてほしい」と期待がどんどん高まっていく、そのシビアさも率直に語りました。だからこそ、パーソナリティ、コミュニケーション、カスタマイズを磨き続け、高まる期待に応えていくことが欠かせない——人とロボットのペアリングはこれからも続いていく、と締めくくっています。
日本の産業の方向性については、短期的には「ソブリン・ロボティクス」(自国で完結するロボット産業基盤)を目指して領域を広げる動きがある一方、各国が同様の取り組みを進めるなかでグローバル市場を勝ち抜くには、対談で挙げた強み領域への投資が鍵になる、との見解が示されました。
「将来は、自分の家でヒューマノイドロボットと暮らしたい」
山本力弥(対談の結びより)
出演者プロフィール
山本 力弥RobotMateHub 代表
ソフトバンクロボティクスにて「Pepper」事業責任者を務めるなど、ロボット業界で11年のキャリアを持つ。現在はフィジカルAI/ロボット業界に特化した人材育成・マッチングプラットフォーム「RobotMateHub」を運営し、講演・市場調査レポートの提供・ハッカソンの主催など幅広く活動している。
RobotMateHubについて
RobotMateHubは、学習コンテンツ・R検定・マッチング・ハッカソン・Research・Consultingなどの事業を展開する、フィジカルAI/ロボット業界特化の人材育成・マッチングプラットフォームです。現場エンジニア・研究者・事業会社・投資家など、業界の最前線に立つメンバーが集まるコミュニティを運営しています。
