2026年7月22日(水)、富士通のオープンイノベーション拠点 Uvance Innovation Studio(JR川崎タワー26F)で「Physical AI Nexus Japan #2 — The Humanoid Frontier — ヒューマノイドの現在地、そしてその先へ」が開催され、RobotMateHub代表の山本力弥が登壇しました。
主催者による公式レポートはすでに公開されています(記事末尾に紹介)。本記事では各セッションのダイジェストは繰り返さず、登壇者としてRobotMateHubが会場に持ち込んだ論点と、他の登壇者の話を聞いて持ち帰った「宿題」に絞ってまとめます。
登壇概要
- イベント名
- Uvance Innovation Studio presents「Physical AI Nexus Japan」#2 — The Humanoid Frontier —
- 開催日
- 2026年7月22日(水)
- 会場
- Uvance Innovation Studio(JR川崎タワー26F)※現地開催
- 主催・協力
- 主催:富士通 Uvance Innovation Studio/協力:株式会社Play Robotics
- 登壇者
- RobotMateHub 代表 山本力弥
- 登壇テーマ
- ヒューマノイド時代のグローバル競争 — 深圳視察レポート
- 会場の状況
- 定員100名に対し事前申込180名超、当日は満席
1. 山本が持ち込んだ論点:深圳で見た「完成を待たない市場」
山本の講演テーマは、登壇直前に視察してきた中国・深圳のヒューマノイド企業の最新動向でした。会場に持ち込んだ論点は大きく3つです。
ハードウェアはすでにコモディティ化している
深圳ではヒューマノイドの機体そのもののコモディティ化が急速に進んでいます。「ハードを作れること」自体はもはや差別化要因になりにくく、競争の主戦場は別の場所に移りつつあります。
「完成したら売る」ではなく「売りながら完成させる」
現地企業の進め方は、完成度を高めてから市場に出すのではなく、まず市場に投入し、顧客の使用データやフィードバックを取り込みながら改善を重ねるというもの。この改善ループの回転速度が、そのまま市場を前に進める力になっています。
日本との差は技術力ではなく「何を優先するか」
日本のロボット開発は技術完成度を重視する文化が強い一方、深圳は市場投入と改善のスピードを最優先する文化です。技術開発力に加えて、投入と改善を高速で繰り返す速度そのものが競争力になりつつあるというのが山本の見立てです。
RobotMateHubがこのテーマを選んだ理由
RobotMateHubはロボット・フィジカルAI領域の人材コミュニティです。市場が「完成品を扱う」段階から「未完成のものを現場で改善し続ける」段階に移るなら、求められる人材像も変わります。深圳の話をあえて人材コミュニティの立場から持ち込んだのは、スピードで戦う市場に対応できる人と企業を、日本でどう増やすかを会場の皆さんと考えたかったからです。
2. 8つのセッションを貫いていた3つの共通認識
当日は山本を含め8組が登壇しました。それぞれの立場は研究、デザイン、実機開発、導入支援とばらばらですが、聞き終えてみると共通する認識が3つありました。
共通認識(1)勝負を分けるのはデータ、それも「日本の現場のデータ」
Play Roboticsの佐野氏・横山氏が示した世界の潮流では、AIが直接ロボットを動かすVLA(Vision-Language-Action)への転換が進み、性能を左右するのはデータだと整理されました。講演で示された数字としては、2026年上半期のロボット関連スタートアップへの投資額が約2.8兆円超、開発中のヒューマノイドは世界で200種類以上とのことです(登壇者提示の数値であり、RobotMateHubでの検証は行っていません)。
イマクリエイトの山本彰洋氏のけん玉世界チャンピオンの動きや溶接技能をロボットへ移す取り組みも、突き詰めれば「どのデータを、どう集めるか」の話でした。深圳の「売りながら完成させる」も、見方を変えれば市場でデータを集めながら完成度を上げる戦略です。日本の現場データを今から集めた者が勝つという主張は、この日もっとも多くの登壇者が言い換えを変えて口にしていたメッセージでした。
共通認識(2)入口は技術ではなくユースケース
HACARUSの染田氏は「まず何を実現したいか」から考えることの重要性と、気軽に試せるラボ環境の必要性を説きました。Muso Actionの村山氏が示した「月額で雇えるロボットワーカー」という提供形態も、大規模自動化ではなく人手不足の少量多品種現場に残る軽作業のロングテールという、明確なユースケースから逆算したものです。ヒューマノイドをどう使うかではなく、誰のどの仕事から始めるかが問われていました。
共通認識(3)フィジカルAI単体では現場は動かない
GMO Various Roboticsの吉澤氏は、最先端のフィジカルAIと従来のモデルベース制御を融合させるアプローチを紹介しました。星野裕之氏は大田区での実証を交えながら、人と共生するには技術だけでなく人に寄り添うデザインの視点が欠かせないと提言。富士通研究所の増本氏からは、再開発中の富士通テクノロジーパーク(武蔵中原)をロボット・フィジカルAIの実証フィールドとして活用する構想が示されました。AIモデルの進化だけを追っても、制御・デザイン・実証の場がそろわなければ社会実装には届かないという認識で一致していたと言えます。
3. パネルで問われた「なぜ社会にまだロボットが少ないのか」
後半のパネルディスカッションの中心にあった問いはこれでした。挙がった要因は技術成熟度、UX設計、安全性、データ不足。一方で、日本のロボットに対する受容性は世界でもトップクラスであるという指摘や、実機に触れてみないと分からないことが非常に多いという実感も共有されました。
そのうえで、登壇者全員が一致した「明日からやるべきこと」は次の4つです。
- 実機に触れる — カタログや動画では分からないことを体で知る
- 現場のデータを集める — 用途ごとに必要なデータは違うため、まず動きながら集める
- 実証実験を回す — 技術の成熟を待たず、失敗しながらデータを積む
- 共創する仲間を増やす — 事業会社とスタートアップの分断を埋める
4. RobotMateHubが持ち帰った宿題
4つのアクションは、そのままRobotMateHubの活動に照らして読むことができます。すでにある取り組みを、この4つに沿って強化していきます。
触れる → Unitree G1 実機体験
RobotMateHubではUnitree G1の実機体験を継続的に行っています。「触ってみないと分からないことだらけ」という会場の声は、この体験機会をさらに広げる理由になりました。
データ・実証 → 企業との接点づくり
現場データと実証フィールドは、コミュニティ単体では作れません。ロボット人材を求める企業とのマッチング(RobotMateHub Connect)や市場調査(RobotMateHub Research)を通じて、現場を持つ企業との接点を増やしていきます。
仲間を増やす → コミュニティとR検定
Discordでの日常的な交流、月2回のウェビナー、そしてビジネスパーソン向けロボット検定「R検定」。特にLevel 3の「ヒューマノイドロボット」カテゴリは、今回のような議論に参加できる共通言語を持つ人を増やすための仕組みです。
深圳が「売りながら完成させる」のなら、日本は「触りながら学び、集めながら実証する」ことでしか速度を取り戻せません。RobotMateHubはその入口であり続けます。
5. 登壇者一覧
当日の登壇者と各セッションのテーマです(肩書は開催時点・主催者発表に基づく)。
佐野 貴
株式会社Play Robotics 代表取締役 CEO
世界のヒューマノイド市場の潮流 — 2026年上半期の投資動向と商用化フェーズへの移行
横山 皓大
株式会社Play Robotics 取締役 CTO
VLA(Vision-Language-Action)による学習ベースへの転換と、日本の現場データの重要性
星野 裕之
フューチャリスト/ロボットデザイナー、otuA inc. 代表、デジタルハリウッド大学 教授、HuRoC(Human-Robot Commons)代表
ヒューマノイド社会をどうデザインするか — 大田区での実証と「人に寄り添うデザイン」
村山 龍太郎
Muso Action 株式会社 CEO
ヒューマノイドはどの仕事から始まるのか — 月額で雇える汎用ロボットワーカー「Muso-Roid」
山本 彰洋
イマクリエイト株式会社 代表取締役 CEO
熟練技能の未来への継承 — けん玉・溶接技能のデジタル化とVR×フィジカルAI
染田 貴志
株式会社HACARUS 代表取締役CEO
ヒューマノイド導入へのアプローチ — ユースケース起点の考え方と気軽に試せるラボ環境
吉澤 大知
GMO Various Robotics株式会社 代表取締役 CEO
制御技術とフィジカルAIの融合 — モデルベース制御と四足歩行ロボット・GMOヒューマノイドラボの取り組み
山本 力弥
RobotMateHub 代表(合同会社ヤマリキエッジ)
ヒューマノイド時代のグローバル競争 — 中国・深圳視察レポート
増本 大器
富士通研究所 Executive Advisor, FTP Redevelopment
実証フィールドとしての富士通テクノロジーパーク — 武蔵中原の再開発とオープンイノベーション
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ヒューマノイド・フィジカルAIに関心のある方は、コミュニティへの参加、実機体験、R検定の受験からお選びください。企業の方の登壇・共同開催のご相談も受け付けています。

